am3:40のノスタルジア

女の友人が胸にしこりがあるとのことで話をしていたら、午前様。友人宅を後にして歩いて帰った深夜3時。人通りのない公園を通り過ぎ、高架下をくぐって近所の大病院まで来た。近道をするため、病院の敷地抜けようと、ガラス張りの病院正面玄関に差し掛かった。そこには20代後半くらいの女性が、ベンチに腰掛けていた。

誰もいないだろうと思っていたので小さく声が出てしまった。相手も驚いた顔でこちらを見ていた。

女性は驚きながらも何かを隠す様に、私に背を向けた。?と思いながらも彼女の前を通り過ぎようとしたら、小さな声が聞こえた。彼女の方からだ。静かに目をやると、さっきの女性に抱えられた、大きな頭で目を大きく見開いた子供がこちらを見ていた。少し異形な子供は小さく「も。も。」と言っていた。驚いたが見た目が可愛い人形みたいに思えてきて私は微笑んだ。そしてそのまま家路に戻りながら少し考えた。

 

なぜ彼女はこんな時間に、小さな子供を連れているんだろう。外を歩くにしてもやはり危なくないか?と考えた時にふと(あ、子供の姿に人が驚くのが嫌なのか。)と思った。だから私を見た時に子供を隠す様にしたんだと思った。または紫外線などに弱い体質の子なのかもしれない、だとしたら人通りの少ない深夜にいてもおかしくないな、病院の前だし。と納得した。

まるで夜の街をふたり占めしてるナイトウォーカー。自由な世界の邪魔をしてしまった気持ちになってしまい、申し訳ない気持ちになった。

病院を過ぎるあたりで申し訳なさから振り返ると、もう2人の姿はなかった。

 

 

子供の頃、姉は大病を患い他県の病院に入院していた。そのため両親は姉につきっきりだった。私は祖父母と共に家に留まり、保育園の送り迎えは祖父がしてくれた。他の家の子は両親どちらかが車で送り迎えの中、自分だけがトラクター(農耕機)だった。祖父のトラクターは最高にカッコ良かった。サングラスをしてechoをふかしながら運転する祖父もカッコ良かった。周りからは笑われたが、荷台から感じる風は気持ちよかった。危険だとか、子供のことを考えてないとか、現代なら言われるだろうが、事故に遭うこともなく、車の通りでさえほぼない田舎の帰り道から見える水平線の景色は、空をゆっくり飛んでるみたいで楽しかったのを憶えている。

 

あの子はどんな思い出を持って生きていくんだろう。きっとネオンや車のヘッドライト、テールランプが眩い街を静かに歩く素敵な時間を、持っていくのかな。

am3:40。

そんな真夜中のノスタルジア