2020-01-01から1年間の記事一覧

管に血の通う音

その辺に落ちている石を拾って色を塗って、バザーか何かで売っていた妹は大学を卒業してから墓屋兼葬儀屋で働いていた。7年で辞めたが常に「孤独死は惨め」と言っていた。どんなに立派な家や墓を持っていても1人で死ぬなんて惨めすぎるから、と実家に帰った…

無題(偽の薬)

懐かしい夢を見た。 遠く離れた故郷の幼馴染みと、遠く離れた友人と近くに住む友人たちと他愛無い話をしながら食事をして、庭でただ寛ぐだけの夢。なんて事のないただの日常のような夢がどうしようもなく愛おしくて、手に入らない、過ごす事のない時間のよう…

思いが距離を越える方法

愛する人が遠くで寂しいという時、 僕は何ができるのだろう? 飛んでいく事も出来ないとき、 言葉はどれだけの力があるのだろう? むしろ、無力? 抱きしめられる距離は、触れ合える距離は、 時に大きな力になるけれど、切なさも産む。 暗い海こそ息吹を感じ…

許さないことで許したい

小学生の時に小さなすれ違いから、仲間外れにされた。私の言葉も悪かったが、そのすれ違いを悪化させたのは私の同級生の親戚の子だった。彼は私をやたらと馬鹿にした。 足が遅い、テストの点が悪い、虚弱、などと言い、彼より出来ることがあれば揚げ足を取る…

あの夜に何があったんだい?

起き上がるのも困難なくらいしんどい日がある。心か、身体か、その両方か。破れる様な頭痛の波をじっと耐えて過ごすときたまに、もうこの世の何処にも良いことなんてないような、起こらないような否定的な奇跡に耽けることがある。世界中で誰よりも自分を労…

am3:40のノスタルジア

女の友人が胸にしこりがあるとのことで話をしていたら、午前様。友人宅を後にして歩いて帰った深夜3時。人通りのない公園を通り過ぎ、高架下をくぐって近所の大病院まで来た。近道をするため、病院の敷地抜けようと、ガラス張りの病院正面玄関に差し掛かった…

今夜、どこかの街の片隅で

見知らぬ男性同士が手を繋いで歩いている姿とか、今ではなかなか見ることが難しいがクラブのキラキラとした照明の中で見つめあってたりとか、明け方にだるそうに笑いあったりそういう光景を思い出すと何とも言えない胸をいっぱいにするものがある。 「歳をと…

優しい食卓

朝が白む頃、眠りにつく僕のひとりの朝食はジャンキー。 日が昇って口にする紅茶がいつもの昼食。 仕事の合間にかじり付く夕食。 それが不規則な生活の中のひとつ。 今朝の朝食は、優しい人の手作りの暖かいお味噌汁。 その暖かさに心が穏やかになった。 誰…

憶測でしかないけれど、思ったこと。

夏だからか、新城島の話題をYouTubeやネット上でよく見かける。 「島の人たちしか参加できない神事」「撮影禁止の祭りで祭りを勝手に撮影したものは帰ってこれない」とかそんなことばかり書かれて、カリギュラ効果で視聴者、閲覧者の好奇心を掻き立てている…

罪悪感を越えて

昔、仏壇のある部屋でセックスをしたことがある。 事に至る前に部屋主が大戸を閉めた時に、そこに宗教を見た気がした。2人しかいない場所にもかかわらずその大戸を閉めることは、バチとか、礼儀とかって言う言葉で言いくるめられている宗教がそこにある、と…

片隅にある罪悪感

2019年7月18日から8ヶ月が過ぎた。 あの放火事件からまだそんなに時は経っていない。 事件からいろんな報道があり、風評被害も生まれ、報道のあり方についても議論が絶えなかった事件だと思う。 あの事件直後は私自身も悲しみや怒りに暮れ、体調まで悪くする…

重力の井戸の片隅で

たいして急いでもいない時にでも、心にゆとりがない時がある。自分の感情の整理がつかない時や、周りの環境から心を急かされる時もあるし、さっき目の前で起こった理不尽な出来事のせいかもしれない。 郵便局に用事があり立ち寄った際、閉局まで少し時間があ…

思い出という重力

「自分事ですが、失恋してしまいました。」 昨年末に一緒に映画を観に行った友人に言われて驚きのあまり言葉を失った。豆鉄砲を喰らったような顔をしていたと思う。友人も困ったような顔で僕に苦笑いを向けていた。 「あなたにでも叶わない恋があるなんて思…