小学生の時に小さなすれ違いから、仲間外れにされた。私の言葉も悪かったが、そのすれ違いを悪化させたのは私の同級生の親戚の子だった。彼は私をやたらと馬鹿にした。
足が遅い、テストの点が悪い、虚弱、などと言い、彼より出来ることがあれば揚げ足を取るように馬鹿にした。不可解な事件の犯人に仕立て上げられようとしたりもした。
悔しいと言うよりも常に悲しかった。努力しても出来ないことよりも、得意なことや好きなものについて「そんなもの役に立たない」「子供じみてダサい」と言われることの方が遥かに私を傷つけた。
また私の言動や行動が愚鈍であることと中性的であったことを揶揄して「雌豚」と呼んだ。
彼のことが心底嫌いだった。中高校も同じ学校だったが、なるべく関わらないようにしていた。話もしない。成人してからは私が極力地元に帰るのを拒み1度も会っていない。
親や友人伝から聞くには、地元に帰り手に職を持ちそれなりにやっているみたいだった。
いつかあいつを見返したい。好きなものを馬鹿にしたことを謝らせたい。そんな復讐心を持ちながら、遠い地でずっと怒りに薪をくべていた。
3年前の10月その復讐は果たせぬままあっけなく終わった。
彼は自死した。
知らせを聞いたときは手が震えた。喜びからではなく、さらなる怒りが燃え上がるのを感じた。
お前を追い詰めるのは、私だったはずなのに、なぜ、逃げたのか。なんで?なんで?なんで?
お前に愛する人との幸せな姿を見せつけてやりたかったのに、お前に嫌な思いをさせるのは私のはずだったのに。
虚しさでおかしくなりそうだった。
大きな喪失感を感じた。
彼を憎むことが、生きることの原動力になった日もあったのに。
今でも許したくないし、許すつもりもない。けれど許さないことを許されたい。許さないことであなたを許したい。誰にぶつけたらいいのかわからない言葉がいつも、彼の自死した日には浮かぶ。
本当は俺の言葉でお前を救いたかった。
くそったれみたいなお前を救って讃えられたかった。大嫌いだ大嫌いだ大嫌いだ。
なんで死んだんだ、馬鹿野郎。お前は本当のクソ野郎に成り下がったと思ってるよ。今もそれなりに幸せに俺は生きてるよ。ザマーミロ。
こうやって物書きの肥やしにするから、幸せになるから、悔しがってくれ。